【30年ぶり!両手で顔を洗えた】

 

和裁の先生をされている70代、女性。

 

両膝の痛みで正座が出来ず、来院されました。

 

幸い、膝は数回の治療で完治しました。

 

喜びの声とともに、患者さんが言いにくそうにこう切り出しました。

 

 

患:先生、実は…。

 

村:どうされました?

 

患:ずっと腰が痛いんです。

 

村:えっ?膝でなく腰ですか?

  どうして今まで黙ってたんですか?

 

患:膝が治ったら、腰を診ていただこうと思いまして…。

 

村:早く言っていただければ、一緒に治療できたんですよ。

 

 

こういう遠慮がちな患者さんは、意外に多い。

 

ということで、改めて腰を診せていただくことになりました。

 

その後、治療を3回目。腰の調子も上々のご様子。

 

 

患:先生、本当に良くなりました。30年ぶりに、両手で顔を洗えるようになりました。

 

村:え?! 今までどうされてたんですか?

 

患:あまりに腰が痛くて、洗面台に顔を近づけられないので、タオルで拭くか、片手で体を支えて、もう一方の手で洗っていました。

 

村:それを30年間ですか?!

 

 

私は、驚愕しました。

 

3回ほどで治る症状のために、30年間も片手で顔を洗っていたのかと思うと…。

 

どこかの整骨院なり、病院なりで、もっと早い段階で治せたのでは?と思うと、何ともせつないというか、悲しいというか、軽い憤りというか…。

 

その後、予後良好で治療は終了。

 

患者さんは、私に向かって両手を合わせて、拝むようにお帰りになりましたが、私はその患者さんの「辛抱強さ」に、両手を合わせたい気持ちになりました。